金平糖の溶ける


「伊作、これやるよ。甘味屋のおばちゃんに貰ったんだ。」

昼食を済まし食堂から長屋へと帰る途中、不意に留三郎は懐から小さな巾着袋を取り出して隣を歩く伊作に放り投げた。伊作は慌ててそれを両手で受け取る。薄桃色の巾着袋には、色とりどりの金平糖が入っていた。

「金平糖!懐かしいなぁ。留三郎、いらないの?」
「ああ、何粒か食べたけど、砂糖の塊だろ?甘すぎるのは苦手なんだよな。」

お人好しの彼の事だから、貰ったその場で何粒か食べて見せたのだろう。その姿が容易に浮かんで伊作は小さく笑った。

「じゃあ有り難く貰っておくね。保険委員の子たちと食べることにするよ。」

懐に仕舞う前に味見をしようと巾着の中に指を入れる。一粒掴んで取り出すと檸檬色をした小さな星屑。伊作はそれを口に放り込んだ。広がる懐かしい甘さ。

「ねぇ留三郎」
「ん?、」

伊作がはたと立ち止まり留三郎に向き直る。名を呼ばれた留三郎が伊作の方に顔を向けた瞬間、唇と唇が触れ合った。あまりに急な出来事に思考が付いていかずに留三郎は目を見開く。伊作は器用に舌で唇を割ると、小さな星屑を相手の口内へと送り込んだ。あまりに一瞬のことで、留三郎は呆けたように伊作の顔を眺めた。

「美味しい?」

巾着を懐に仕舞いながら、悪戯に伊作が笑う。やっと事態を理解した留三郎は頬を真っ赤に染めて大きな溜め息をついた。

「お前なぁ…誰かに見られたらどうするんだ。長屋じゃねぇんだぞ」
「んー、その時はその時。今は誰もいなかったから平気だよ。」

暢気な答えに体の力が抜ける。長屋に戻ったら少し仕置きでもしてやろうかと、留三郎は甘い砂糖の塊を噛み砕いた。

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伊作は大胆なところあると思うんです絶対(断言)
これは機会があったら裏で続き書きたいなぁ。
ちなみに蜜子も金平糖苦手です。あまい。でも和三盆はすき。
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